大会・例会案内 過去履歴

 

 

 

 

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― 次回第117回例会のご案内 ―

下記のとおり第117回例会を開催いたします。多数お集まりください。

例会終了後に、忘年会を兼ねた懇親会を開催しますのでふるってご参加ください。会場は例会会場 近辺、会費は3,500円程度の予定です。詳細は当日、お知らせいたします。

日時:2016年12月17日(土) 15:00~17:00

会場:サテライトキャンパスひろしま 604中講義室(6階)

(広島市中区大手町1-5-3 広島県民文化センター内 Tel.082-258-3131)

 

<研究発表要旨>

① 戦後台湾の日本語文学―黄霊芝「自選百句」の方法―

下岡友加(広島大学大学院文学研究科准教授)

黄霊芝(1928-2016)は、創立当初(1970)から台北俳句会の主宰をつとめた俳人であり、『台湾俳句歳時記』(2003、言叢社)の著者である。黄の俳句暦は60年に及んだが、彼が最終的に行き着いた俳句観を知る手がかりとして「自選百句」がある(『戦後台湾の日本語文学 黄霊芝小説選2』2015、溪水社)。

本発表は、まず「自選百句」が「台北俳句集」「黄霊芝作品集」「候鳥霊芝合同俳句集」「台湾俳句歳時記」等、過去の黄の句からどのように選ばれ、構成されているかを詳らかにする。句の初出年代からすれば、「自選百句」は黄の長い句歴に広くまたがり、年代ごとの代表句をほぼ平等に拾うかたちで構成されていることがわかる。また、選ばれた百句をリズム、音調、季語、取り合わせの観点から分析すると、結果として次の四点が特徴として指摘できる。第一に、定型を基調とした句が92句を占め、自由律俳句は多くない。第二に、リフレインによる音調への高い意識が見られ、百句の結びにその典型句が集中して置かれている。第三に、季語は99句に採用され(台湾季語30句、日本季語69句)、重要な要素として機能している。第四に、黄霊芝俳句の基本構造として既に指摘のある「二章体の配合」(磯田一雄)、「両物対立原理」(阮文雅)といった方法が確認され、その取り合わせのために定型が破られる場合がある。その他、口語的表現の採用や自然物と人間を同等に捉える世界観、諧謔性や遊びの要素等を見てとることができる。

黄は生前、「俳句は日本の先生が開拓した分野だけど、それに巻き込まれるのではなくて、という気持ち」(2013.7.14インタヴュー)があると話していた。本発表はそのような彼の追究する独自性が、実際にどのように表現として定着しているかをみる試みである。

 

② ピエール・ボナール作《桟敷席》に関する一考察―ベルネーム=ジュヌ画廊との関わりを中心に―

渡辺千尋(呉市立美術館学芸員)

ピエール・ボナール(1867-1947)はモーリス・ドニやポール・セリュジエらとナビ派を結成し、本格的に画家としての活動を始めることとなるが、1900年以降ナビ派の活動が収束すると、その後は特定の芸術動向には属さず画業を続けた。ボナールは画業の初期からポール・デュラン=リュエルやアンブロワーズ・ヴォラールといった、パリの有力な画廊で個展やグループ展を開催したが、ベルネーム=ジュヌ画廊もボナールの画業形成において大きく関わった画廊である。現在もパリ11区で営業しているこの画廊は、1900年ごろ、先代からその息子たちであるジョスとガストンのベルネーム=ジュヌ兄弟に経営が引き継がれた。同世代の若く有望な芸術家たちの作品を取り扱いたいと考えていた兄弟は、1906年にボナールと専属的な契約を結び、以後公私に渡ってボナールを支援することとなる。

ボナールは兄弟の肖像画として2点の油彩画を制作しているが、1908年に制作された《桟敷席》では、ガストンの頭部が画面の上端で寸断されるという大胆な構図で描かれている。この頭部の寸断について、先行研究では、ボナールの兄弟に対する皮肉とする考えが見受けられる。しかしボナールは画業を通じて、画面の上端で人物像の頭部が寸断される構図を多用しており、ベルネーム兄弟もこの画面構成をボナール作品の特徴として認識していた。

本発表では、ボナールと、彼の画業において重要な役割を担ったベルネーム=ジュヌ画廊との関係を整理し、これまで十分な考察がされてこなかった《桟敷席》の作品解釈を試みる。

 

 

                             

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