————————————————————–
【広島芸術学会】会報第159号 2020年12月9日発行
————————————————————–
□目次□
1.第131回例会(12月20日)のご案内
2.第12回芸術展示〈制作と思考〉「Sweet Home—家庭の美学」応募要項について
3.「広島文化賞」受賞のお知らせ
4.催し物のご案内
5.事務局から
・【重要】会費の納入
・新入会者のお知らせ
———————————————————————————–
1.第131回例会(12月20日)のご案内
下記の要領で広島芸術学会第131回例会を開催いたします。多数のご参加をお待ち申し上げております。
日時:12月20日(日)15:00〜17:10
会場:ウェブ会議システムZoomを用いたオンライン開催
※参加方法の詳細については、開催一週間ほど前にメールなどでお伝えいたします。
プログラム
●15:00〜16:00:特別報告
「コロナ禍での広島県立美術館の模索──戦後75年の自主企画を中心に」
報告者:山下寿水(広島県立美術館)
(要旨)
新型コロナウイルスの世界的な感染流行は、国内外の美術館にも大きな影響を及ぼし続けている。休館や、展覧会の中止・延期・規模の縮減は、その最たるひとつに挙げられる。広島県立美術館でも3月7日〜5月11日の期間、臨時休館を余儀なくされた。4月から開幕予定であった「生誕135年記念 川端龍子展—衝撃の日本画」は、出来得る限りの感染症対策を行い、会期変更のうえ実施に漕ぎ着けられたが、夏に開催予定であった「藤子不二雄Ⓐ展−Ⓐの変コレクション−」については、数万人規模の来場者が訪れた場合、適切な感染防止策が取れない恐れがあるため、開催を延期する運びとなった。
その代替として、「日常の光−写し出された広島」という展覧会を7月23日〜8月23日に開催した。本展は元々、終戦75年の節目に開催を検討していた写真展であったが、収支的に見通しが立たず、お蔵入りとなった企画であった。このたびは、企画意図、予算上の理由、県外輸送のリスク等を鑑みて、出品作家を県内出身の6名に絞って実施。広島出身者だからこそ撮影できる(あるいは撮影できない)広島の姿を提示した。また、夏の所蔵作品展では「サマーミュージアム 戦後75年特集」と銘打ち、各分野(彫刻・西洋美術・洋画・日本画・工芸)で過去を追想する企画を実施。会期中には、新型コロナウイルスの影響で貸出を延長していた所蔵品がドイツから戻ってきた。
今後、各館の特色や地域性というものは、より重要視されるだろうと発表者は考える。幾つかの事例に触れながら、現在の美術館を取り巻く状況について報告する。
●16:10〜17:10:研究発表
「嘆きの系譜学──うたの美学のために」
発表者:柿木伸之(広島市立大学)
(要旨)
現在取り組みつつある美学の主題の一つに、うたとは何かという問いがある。この問いを抱くようになった契機の一つに、広島出身の作曲家、細川俊夫の作品に継続的に接してきたことがある。とくに東日本大震災以後の細川の音楽は、嘆きからうたを響かせる一つの道筋を示していると考えられる。こうしたうたの展開を見据えつつ、嘆きからのうたを掘り下げることは、うたを、例えば万葉の挽歌も暗示するその根源に立ち返らせながら、その可能性を見通していくことに結びつくだろう。
ここで「うた」とは、音楽における歌唱や旋律的表現だけではない。そこには文学における詩的表現も含まれる。うたの美学は、音楽と文学を横断して、うたう可能性をその源から汲み出すべきだろう。そのことは一方で、情報通信のネットワークによって精神の営みまで管理されつつある現在、自己を絶えず創出する自由な生の余地を切り開くことでもある。他方でうたへの問いは今、「アウシュヴィッツの後に詩を書くことは野蛮である」というアドルノの言葉も踏まえなければならない。
うたの不可能性を突きつけるアドルノの言葉に、パウル・ツェランは詩の変革をもって応えた。そして、そこに嘆きの変容を見て取ることもできよう。今回の発表では、作品と思想の両面から、うたの根源の一つに嘆きがあることを示しつつ、その表現の系譜の一端を、現代におけるうたの変革の意義を見通すことへ向けて描くことを試みたい。それをつうじて、歴史の積み重なった現在においてうたう可能性を切り開く美学の出発点に立てればと考える。
2.第12回芸術展示〈制作と思考〉「Sweet Home—家庭の美学」応募要項について
第12回芸術展示〈制作と思考〉を、「Sweet Home—家庭の美学」をテーマに開催することにいたしました。詳細は、本メールに添付の応募要項および出品申込票をご覧ください。
3.「広島文化賞」受賞のお知らせ
当学会はこのほど、公益財団法人ひろしま文化振興財団から、第41回の広島文化賞(団体)に相応しい団体として選定され、受賞いたしました。
受賞理由の一つは、本学会が、日本学術会議傘下の藝術学関連学会連合(15学会)の構成員として学術活動を営む団体でありながら、市民、作家にも開かれた学会として、広島地域の芸術文化活動に幅広く貢献してきたことです。本学会は、1987年に「広島芸術学研究会」として発足し、1992年に現在の「広島芸術学会」に改称して、30年以上、学術研究と芸術文化を有機的に融合するべく活動を継続してきたことが、評価されたものと思います。
もう一つの理由としては、本学会の活動内容が、美術や文学などの個別の領域を越えて広く芸術諸ジャンルにわたることです。その上で、研究者、創作者や実演者また愛好者が連携して、この幅広い芸術文化領域で創作的実践と学術研究の相互啓発を目指しながら、地域に根ざし、地域を越えた学術・芸術文化の交流また興隆に貢献してきたことが、評価されたものと思います。
以上、慶賀すべきこととして、会員の皆様に報告いたします。
今後も、市民に開かれ、地域に根ざした学会として、実りある活動を継続すべく、会員皆様のいっそうの理解と協力をお願いしたく思います。
会長 青木孝夫
4.催し物のご案内
展示名:「広がる書と写真の世界」(小田茂一の書と写真)
会期・時間:2020年12月15日(火)〜20日(日) 9:00〜17:00
場所:広島県立美術館(広島市中区上幟町2-22)
地下1階 県民ギャラリー 第1展示室
展示名:「ACTIVE IN MIRASAKA(アクティブ・イン・三良坂)」
出品者:手取実咲、的場由樹、大成大輔、村田公人、井手原敬一、才田博之、岡孝博
会期: PART1 2020年12月6日(日)〜2021年1月23日(土)
PART2 2021年1月31日(日)〜3月13日(土)
※休館日:毎週月曜日、12月28日〜1月4日
場所:三良坂平和美術館(三次市三良坂町三良坂2825番地1)
開館時間:午前9時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
入館料:一般150円(団体120円)・65歳以上、高校生以下及び「身体障碍者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「被爆者健康手帳」をお持ちの方は無料
5.事務局から
◆ 会費の納入
令和2年度会費の払込取扱票が、年報とともに先日お送りした封筒に同封してありますので、よろしくご確認ください。納入期限は、本年12月15日となっています。まだ納入されていない方は、よろしくお願いいたします。12月15日を過ぎても同じ取扱票にて納入していただけます。
なお、過年度の未払い分がある場合は、同じ取扱票にて、合わせて納入していただけます。当学会の会計年度は、毎年7月1日から翌年の6月30日までとなっています。会費の納入状況を確認したい方は、事務局(hirogei@hiroshima-u.ac.jp)にお問い合わせください。
◆ 新入会者のお知らせ(敬称略)
多田羅 多起子(たたら・たきこ/日本美術史(近世、近代絵画中心))
BOONSERM Sirada(ブンサーム・スィラダー/比較文学、タイ文学、日本語教育)