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【広島芸術学会】会報第163号 2021年12月1日発行
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□目次□
1.第133回例会(12月18日)のご案内
2.事務局から
・会費の納入(未納入の方へのお願い)
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1.第133回例会(12月18日)のご案内
下記の要領で広島芸術学会第133回例会を開催いたします。ご参加をお待ち申し上げております。
日時:12月18日(土)15:00〜17:10
会場:ウェブ会議システムZoomを用いたオンライン開催
※参加方法の詳細については、開催一週間ほど前にメールなどでお伝えいたします。
【プログラム】
●15:00〜16:00:研究発表1
「移動するコピーマシーンから主体化の装置へ──ダムタイプ「pHプロジェクト」」
発表者:石谷治寛(広島市立大学)
(要旨)
本発表ではマルチメディア・アーティスト集団ダムタイプの「pHプロジェクト」(1990)を再検証する。このプロジェクトは印刷物、インスタレーション、パフォーマンス、ヴィデオからなる一連のアウトプットの総称で、記録映像のVHSによって広く知られた。ダムタイプの活動を特徴づけているコレクティブ性、情報化時代の監視やコピー、機械装置によってもたらされる身体性や変性意識といったテーマは、ジル・ドゥルーズ、ジャン・ボードリヤール、ミシェル・フーコーらの現代思想や1980年代関西の集合的な芸術実践、とりわけ京都市立芸術大学構想設計に関わる美術家たちの流れに位置づけられ、ダムタイプの前作「Pleasure Life」で、すでに主題になっていたことが指摘できるだろう。しかしそれ以上に本作は、シミュラクル的反復の螺旋運動を超えた新しい主体化の方法が、世界中のオルタナティブ・スペースでの公演、と同時にクラブカルチャーとの接近によって模索されるようになったと言える。
2018年の回顧展のために制作されたダムタイプ自らのアーカイブ・ブックおよび京都市立芸術資源研究センターによる当時のメンバーのインタビューやデジタル化された関連資料をもとに考察を加えたい。
●16:10〜17:10:研究発表2
「引札の美術 ─明治期 年末年始に配布された引札を中心に─」
発表者:青木隆幸(海の見える杜美術館)
(要旨)
引札は「広告の札。ちらし」(日本国語大辞典)である。その制作目的に準じるかのようにこれまでの主要な研究は広告メディアの視点からなされてきた。しかし引札は、美学美術史の思索に照らし合わせるなら、原作を複製して大衆が美術を受容する機会を増やし生活を豊かにするものであり、制作にあたっては消費社会の影響を受け、仕上がりは製造方法によって異なりが生じるという性質をもつ複製美術のひとつであり、生活文化の中に溶け込んだ芸術的なもののひとつでもある。
発表者は、所属館において引札の収集に携わり、このたび同コレクション約2150点の作者・印刷技法・制作年代などの特定・推定作業を一通り終えた。本発表では、その調査整理過程で得た知見をもとに、以下の順序で引札の美術について考察を深める。
1 絵入の引札の始まり
2 暦問屋の引札参入
3 弘暦者 中村小兵衛
4 略暦発行の自由化による新たな版元の参入と競争
5 古島印刷所
6 絵師について
7 引札の絵の特徴について
明治期、年末年始に全国津々浦々で配られる引札は風物詩であった。多くは絵が添えられており、日本人の美意識との親和性も高かったであろう。江戸時代の浮世絵に次いであらわれた大衆芸術のひとつのジャンルともいえるのではなかろうか。絵入の引札の始まりから全国展開に至るまでの概略、レリーフを思わせるような凹凸やインクの盛り上がりなど知られざる引札の印刷技術、新年の広告メディアという性質故の絵の特質など、引札の美術について断片的ではあるがその輪郭をとらえてみたい。
2.事務局から
◆会費の納入(未納入の方へのお願い)
令和3年度会費の払込取扱票を、年報(および承認後の総会議案書)を送付した際に封筒に同封しています。未納入の方は納入をお願いいたします。なお、過年度の未払い分がある場合は、同じ取扱票にて、合わせて納入していただけます。当学会の会計年度は、毎年7月1日から翌年の6月30日までとなっています。取扱票を紛失した未納入の方、また会費の納入状況を確認したい方は、事務局(hirogei@hiroshima-u.ac.jp)にお問い合わせください。