お知らせ

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広島芸術学会 令和6年度総会・第38回大会のご案内

1.広島芸術学会 令和6年度総会・第38回大会のご案内
下記のとおり広島芸術学会 令和6年度総会・第38回大会を開催いたします。
日時:2024年9月7日(土)10:30~15:25
会場:広島県立美術館講堂
«総会» 10:30~11:20
  【― 休憩 11:20~11:35 ―】
«大会» 11:35~15:25
●研究発表
・研究発表1 11:35~12:20
「民藝概念の変容とその現代応用可能性―柳宗悦・宗理から現代の民藝へ」
志賀響乃(一般財団法人 下瀬美術館 事務職員)
  【― 昼休憩 12:20~13:30 ―】
・研究発表2 13:30~14:15
「サルバドール・ダリとヒロシマ―ダリの古典主義への回帰について」
瀧口健太(東広島市教育委員会生涯学習課 主事)
  【― 休憩 14:15~14:35 ―】
●ミニコンサート 14:35~15:25
「クラヴィコードで聴くファンタジー ―エマニュエル・バッハのファンタジーを中心に―」
演奏:末永雅子(広島文化学園大学名誉教授)
 
2.大会研究発表要旨
・研究発表1
「民藝概念の変容とその現代応用可能性―柳宗悦・宗理から現代の民藝へ」 志賀響乃(一般財団法人 下瀬美術館 事務職員)

 本研究では、柳宗悦の民藝思想について、民藝運動創始期から現代に至るまで、社会背景と柳宗悦、柳宗理の活躍を概観し、民藝思想と工藝・インダストリアルデザインの変容と柳父子の結節点を捉え、2010年代以降の民藝の動向と、具体的な造形、民藝の未来系について考察する。
柳宗悦・宗理の思想や活躍について分析された先行研究として、出川直樹『人間復興の工藝「民芸」を超えて』(1988)や、北田聖子(2013)「「アノニマスデザイン」は作り得るか:柳宗理の、発見されることへのプロジェクト」、また1990年以降の民藝ブームについては濱田琢司(2015)「民芸ブームの系譜についての覚書:1930年から現代まで」や、鞍田崇(2015)『民藝のインティマシー「いとおしさ」をデザインする』などが挙げられる。いずれも特定の時代区分の中での民藝思想や受容について分析されたものである。
 本研究は現代における民藝の具体形として、2022年度に日本民藝館で開催された「日本民藝館展」の新作工藝のほか、ユニクロやスタンダードプロダクツ製品を挙げながら、それらがいかに民藝思想と共鳴するかということについて独自に提案する。
柳父子の活躍から現代までを概観することで、民藝という体系は宗悦・宗理の時代をへて、失われようとしているものを眼差し、肯定し、「すくいあげる」ことが核となり、ムーブメントやあらゆる造形が生み出されてきたと予測される。またこのことから、未来におけるコミュニティハブとしての「民藝」を展開することができると結論づける。
 
・研究発表2
「サルバドール・ダリとヒロシマ―ダリの古典主義への回帰について」 瀧口健太(東広島市教育委員会生涯学習課 主事)

 今年2024年はスペインの芸術家サルバドール・ダリ(1904—1989)の生誕120周年にあたる年であり、日本においても回顧展が企画されている。多くの日本人作家に影響を与えたダリであるが、実はダリがアメリカによる広島への原爆投下から非常に大きな影響を受けた作家であることはあまり知られていないのではないだろうか。ダリは広島への原爆投下直後、原爆を題材にした《原子とウラニウムの憂鬱な牧歌》(1945)を発表している。その後ダリは原子物理学の考え方を取り入れた作品を発表するようになる。1951年には『神秘主義宣言』を発表し、原子物理学と古典主義の技法を、キリスト教神秘主義によって融合させようとする姿勢を打ち出す。
 原子爆弾という未曽有の兵器、それによってもたらされた被害に衝撃を受けた、ということは自然なことである。しかし、原子物理学の考え方と古典主義技法をキリスト教神秘主義によって結び付けようとする姿勢は唐突である。発表者はこのことについて、これまで1940年代後半から1950年代にかけてのヨーロッパにおける宗教への回帰に注目し、ダリもこの動きに影響を受けたものとして論じていたが、本発表ではそれに加え、第二次世界大戦後のスペインの政治と美術の関係に注目して論じる。スペインではフランコ政権と宗教が密接に結びついており、美術にもその影響が及んだ。ダリの古典、宗教への回帰に当時のスペインの状況がどれほど影響したかという視点も含めて論じる。
 
3.ミニコンサート:「クラヴィコードで聴くファンタジー ―エマニュエル・バッハのファンタジーを中心に―」 演奏:末永雅子(広島文化学園大学名誉教授)
 クラヴィコードは、14世紀ごろから19世紀初めにかけて愛好された、チェンバロともピアノとも異なる独特の特徴と魅力を持った鍵盤楽器です。18世紀には、大バッハ(J. S. バッハ)の息子、エマニュエル・バッハ(E.バッハ)により、自由な要素を統合した「フライエ・ファンタジー」と呼ばれる即興性の強い新しいファンタジーがクラヴィコードのために書かれました。
 このミニコンサートでは、E.バッハが愛用していたジルバーマンのクラヴィコードを模した楽器を使用し、楽器や作品の紹介をまじえつつ、E.バッハやE.バッハの影響を受けたベートーヴェンの作品を聴いていただきます。
 
○曲目
E.バッハ ファンタジー ニ長調 Wq. 117-14
E.バッハ フライエ・ファンタジー 嬰ヘ短調 Wq. 67
ベートーヴェン 幻想風ソナタ 嬰ハ短調「月光」 Op. 27-2より第1楽章
ほか
○使用楽器
フレットフリー式クラヴィコード
高橋靖志 2019年制作
伝ヨハン・ハインリヒ・ジルバーマン 1775年頃にもとづく