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【広島芸術学会】会報第164号 2022年3月19日発行
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□目次□
1.第134回例会(4月9日)のご案内
2.事務局から
・会費の納入(未納入の方へのお願い)
・新入会者のお知らせ
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1.第134回例会(4月9日)のご案内
下記の要領で広島芸術学会第134回例会を開催いたします。ご参加をお待ち申し上げております。
日時:4月9日(土)15:00〜17:10
会場:ウェブ会議システムZoomを用いたオンライン開催
※参加方法の詳細については、開催一週間ほど前にメールなどでお伝えいたします。
【プログラム】
●15: 00〜16:00:研究発表1
「記憶の表象を探すふるまい 佐竹真紀子の絵画について」
発表者:細萱航平(宮城県立美術館)
(要旨)
本発表では、震災の記憶をめぐる美術の実践の一例として佐竹真紀子の活動を紹介するとともに、特に近年佐竹が取組む絵画作品について、そのモチーフと制作法の関係を考察することで、その制作行為が記憶の表象を探すふるまいとして機能している可能性を論じる。
佐竹真紀子は宮城県利府町を拠点に活動する画家。1991年に宮城県で生まれ、2016年武蔵野美術大学大学院を修了後、地元に戻り活動を続けている。彼女の名を最初に知らしめたのは2015年に東日本大震災で被災した仙台市沿岸部にバス停留所を模したオブジェを設置する《偽バス停》という取組みであった。近年は大学時代から取組んでいた絵画制作に回帰し、土地で目にする風景と人びとに聴く暮らしの情景を一枚の絵画として表している。すなわち、様々な時空におけるその場所の風景が画面上に重ね合わされる。
その制作法の特徴として、パネルの上に幾重にも重ねたアクリル絵具の層を、彫刻刀で彫り込むことによってイメージをつくりだす点が挙げられる。したがって佐竹のつくりあげる画面は堆朱のごとく鮮やかな色面で構成され、そのイメージは「描かれた」ものというより「掘り起こされた」ものという方がしっくりくる。ある場所の現在の風景や人々の語りの中に現れる風景をひとつの画面に表すためにそのような制作法が選ばれていることは、一見すると「記憶を掘り起こす」というような直接的なメタファーとして行われているように見えるが、実際は、記憶の表象に臨む佐竹の感覚的な必然性に基づく行為として帰結したものではないだろうか。
●16:10〜17:10:研究発表2
「イメージと魔術 ──アンドレ・バザンとジャン=ポール・サルトル」
発表者:大石和久(北海学園大学)
(要旨)
一時期、特に1970年代のイデオロギー批評全盛期において、批判の標的とされた映画理論家アンドレ・バザン。彼の名誉回復は、すでになされたと思われる。現在、彼の再評価は高まるばかりであり、その先駆性に注目が集まっている。さて、バザンのイメージ論がジャン=ポール・サルトルの想像力論をその発想源としていることは、多くの論者から指摘されている。本発表では、再度、両者の関係を取り上げたい。その必要性が映画学者ダドリー・アンドルーの「フェティッシュの存在論」(2008年)における指摘により、生じたと思われるからである。その中でアンドルーは、サルトルが『想像力の問題』で「魔術」について論じた記述と、バザンが「写真映像の存在論」で言及した「魔術」についての記述が類似していることを指摘した。しかし、本発表では、むしろ両者の差異に注目したい。その差異を通して、バザンのイメージの存在論が持つ革新性を明らかにすることが本発表の目的である。先にバザンの先駆性について言及したが、映画史家のトム・ガニングは現代の映画理論に特徴的なインデックス概念を再検討する際に、バザンのこの「魔術」の概念に注目している。本発表は、インデックスとは異なる「魔術」とは何かを探る試みでもある。
2.事務局から
◆会費の納入(未納入の方へのお願い)
令和3年度会費の払込取扱票を、年報(および承認後の総会議案書)を送付した際に封筒に同封しています。未納入の方は納入をお願いいたします。なお、過年度の未払い分がある場合は、同じ取扱票にて、合わせて納入していただけます。当学会の会計年度は、毎年7月1日から翌年の6月30日までとなっています。取扱票を紛失した未納入の方、また会費の納入状況を確認したい方は、事務局(hirogei@hiroshima-u.ac.jp)にお問い合わせください。
◆新入会者のお知らせ(敬称略)
香村 ひとみ(こうむら・ひとみ/現代美術、アートマネージメント、キュレーション)