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【広島芸術学会】会報第168号 2023年3月15日発行
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□目次□
1.第136回例会(4月2日)のご案内
2.事務局から
・新入会者のお知らせ
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1.第136回例会(4月2日)のご案内
下記の要領で広島芸術学会第136回例会を開催いたします。ご参加をお待ち申し上げております。
日時:2023年4月2日(日)14:30~16:45
開催方法:対面とオンラインのハイフレックス開催(※今回の研究例会は、オンサイトでの「対面式参加」を基本に企画・運営いたします。)
対面での参加
〇会場:広島大学・東広島キャンパス、総合科学部・M棟(正面玄関のある事務棟)の2階「第一会議室」(住所:東広島市鏡山1-7-1)
〇アクセス:JR山陽本線・西条駅から「広島大学」方面行バスに乗車し、「広大西口」にて下車(駅から所要時間約20分程度) 。「広大西口」バス停からまっすぐ東へ進み、左手前の建物(西体育館向かい)が「総合科学部・M棟(事務棟)」。その建物の正面玄関(車寄せ有り)を入って、左手に回り、階段を上がってすぐが「第一会議室」。
○参考マップ
https://www.hiroshima-u.ac.jp/system/files/199577/saijyo_ja_20221201-mini.pdf
オンラインでの参加
ウェブ会議システムZoomによるアクセスURL等を、開催4、5日前にメールなどでお伝えいたします。
オンラインで参加される方は、こちらをご利用ください。
【プログラム】
●14:30~15:30:研究発表1
「呼吸と引力の共奏―岡田式静坐法におけるフラクタル的構造理論なるものを通して―」
発表者:片山俊宏(広島大学大学院人間社会科学研究科 研究員)
(要旨)
明治時代後期に登場した精神療法・岡田式静坐法(岡田療法)は、当時流行した精神疾患の治療への取組の一環として、近代科学教育や身体のモノ化による主客分離の克服を模索していた。全体性の回復に向けて注力したのは坐の姿勢教育であったが、その意義を呼吸のひろがりという観点から強調する。そこで本発表では、岡田療法における呼吸の思想を重点的に分析する。
岡田療法は、呼吸のリズムが身体の重心に支えられている点に着目し、その全体的構造への洞察を以下の様に深めていく。身体の重心を根本から支えるのは大地であるが、大地の重心もまた、引力により諸物質間における重心の均衡が形成されていく連鎖に支えられていると考えた。そしてそこに、大地とそれを構成する諸物質とが、相似的な重心運動に紐づけられるフラクタル的構造なるものをみる。
無意識の呼吸は、引力がこの構造を生成するリズムから湧き出るものであり、植物の光合成や潮汐といった自然の呼吸と未分化であると考えた。このような呼吸の全体性を体現する意味を込めて、肚に重心を置く身体技法を追求し、自ら考案した岡田式静坐法をはじめとする坐の姿勢教育を推奨した。岡田療法は、引力に共生としての呼吸のリズムを観取する感性を涵養させ、そこに精神療法としての効果を期待していた。興味深いのは、フラクタルは視覚芸術において表現されてきたが、岡田療法は生理学や物理学的自然現象そのものにその模倣を求め、姿勢をその技術的体系の中心に据えようとしたことである。本発表では、このようなアートの文脈において姿勢の意義を検討していた思想にも着目したい。
●15:45~16:45:研究発表2
「米芾の鑑賞と制作――「平淡」「天真」「自然」「俗」を例に」
発表者:福光由布(四天王寺大学、奈良女子大学ほか非常勤講師)
(要旨)
北宋の四大家の一人である米芾(皇祐三~大観元年、1051-1107)は、書画の鑑識、収蔵、書作において名を挙げた人物である。米芾は幼少より唐代の書法からその規矩を学んだが、蘇軾(景祐三~建中靖国元年、1036-1101)に晋人の書を学ぶことを示されたことを契機に、唐代の書を遠ざけるようになる。以降米芾は、書画は「晋魏平淡に入る」ことが最上であると見定め、「平淡」であること、「天真(あるがまま)」、「自然」であることを、鑑賞や書画制作の目指すべき境地として掲げるに至った。
米芾の理想とする「平淡」は、ときに「天成」「天真」「自然」などの語と併用され、米芾の一貫した芸術観を示す主な評語として挙げられる。また絵画における「天真」の語は、米芾の発言によってそれ以後のイメージを定着させるに至ったことは、すでに諸研究によって明らかにされている。しかし、もとよりこれらの概念は、米芾が初めて提唱したものではない。
本発表では、米芾の著作『書史』『宝晋英光集』『海岳名言』『画史』などから、米芾が、老子の「平淡」や荘子の斉物論的思考を自身の書論の基底としていること、そして「天然」と「工夫」の調和を品評の基準とした南北朝時代の書論や、「無為」「自然」或いは禅的「空」を目指すことで「心手合一」を説く唐、宋代の書論の系譜を継承していたことを明らかにする。その上で、この「平淡」や「天真」「自然」などの語が、作者よりも作品自体を重視するという米芾独自の品評基準を示しているということを以て、米芾書論の独自性を示し、改めて北宋における米芾の書論の位置づけをおこないたい。
2.事務局から
◆ 新入会者のお知らせ(敬称略)
阮文軍(げん・ぶんぐん/日本近現代美術史)