会報

No.178

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□目次□

1.第142回例会(4月27日)のご案内

2.事務局から

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1.第142回例会(4月27日)のご案内

下記の要領で広島芸術学会第142回例会を開催いたします。ご参加をお待ち申し上げております。

日時:2025年4月27日(日)15:00~17:10

会場:広島大学東千田キャンパス(住所:広島市中区東千田町一丁目1番89号)

総合校舎L棟5階 地域連携フロアSENDA LAB 会議室1

東千田キャンパスへのアクセス(https://www.hiroshima-u.ac.jp/access/senda

キャンパス内の会場までのアクセスは、(https://www.hiroshima-u.ac.jp/iagcc/ccc/sendalab)

 

【プログラム】 

  • 15:00~16:00:研究発表

「承認論の美学的系譜——ゼールおよびフィヒテ、ヘーゲル、アドルノを中心に」

発表者:松山聖央(岡山県立大学) 

(要旨)

 本発表の目的は、マルティン・ゼール(1954-)が提案する概念「美的承認」に注目し、従来の倫理学的な承認論の成立と展開のうちに美学的な契機の萌芽を跡づけることである。

 「美的承認」はカントの無関心性の美学を継承し、対象の実存への無関心という否定的定義を、対象の非実存的、すなわち現象的側面への関心として肯定的に読み替えることで、人間と同等の人格を持たない自然の事物一般にも、「一方向的な」という限定のもとで承認関係が成立することを根拠づける。これまで発表者は、カントやアドルノからの影響関係の整理と本概念の美学的意義の解明、関連の深いホネットの承認論との比較、英米圏の環境美学・日常美学に共通する問題意識の指摘を行ってきた。これらの成果を踏まえて、本発表では、フィヒテ、ヘーゲル、アドルノを中心に、近代以降のより一般的な倫理学的議論にゼールの理論に通ずる契機が懐胎していることを指摘する。

 フィヒテからヘーゲルに至る近代の承認論においては、自己と他者という人格的な間主観的関係が主題化されるが、その過程ではまず非我(Nicht-Ich:フィヒテ)や物件(Sache:ヘーゲル)としての非人格的対象と自己との対立関係が問題となる。また、アドルノの思想では、ゼールの直接的な着想源である非同一的自然の尊重というモチーフに加え、『ミニマ・モラリア』に見られる事物一般への承認的態度への言及も重要である。本発表では、こうした人間と対象世界との関係をめぐる議論に焦点を当てることで、人間どうしの道徳的相互承認の手前にあるもうひとつの承認の美学的系譜を明らかにしたい。

 

  • 16:10~17:10:研究発表

「「基いの町」アート・プロジェクトにおける美術実践と批評」

発表者:石松紀子(広島市立大学) 

(要旨)

 2000年代以降の現代美術を特徴づける主な傾向として、美術家が協働や対話をとおして社会と関わる「ソーシャリー・エンゲイジド・アート」が挙げられる。そこでは作品の形式や美的要素よりも社会的な課題に取り組む実践が重視される。その変化を美術史家のクレア・ビショップは「社会的転回」と呼んだ。

 この新たな方向性は日本においても、地方都市や過疎地での国際芸術祭、そしてアート・プロジェクトの増加というかたちで2000年代以降に顕著に見られる。他方で、そうした潮流に対して、「地域アート」という名のもと、現代美術が従来の批判性を欠き、地域活性化の道具となっているという批判もある。また、社会的な問題が美術の領域にもち込まれるため、その批評の困難さが課題となっている。

 このような批判や課題があるなか、「基いの町」アートプロジェクトは、2021年から2024年まで、広島の基町を舞台に展覧会やワークショップを実施してきた。同プロジェクトにおいて、参加作家は基町でリサーチを行い、住民との対話や交流をとおして作品制作を行なっている。

 基町は広島の歴史的重層性の上に成り立ち、復興プロセスを理解する上でも重要な町である。現在では、少子高齢化や外国籍住民の増加による異文化間のディスコミュニケーションという社会的課題にも直面している。

 こうした背景のもと、本発表では、「基いの町」プロジェクトが美術実践をとおして地域にどのように関わってきたか、またその批評の試みについて、「地域アート」への批判や批評の困難さを踏まえながら検証することを目的とする。

 

【懇親会】 

 例会終了後、以下の要領で懇親会を開催いたします。ご参加をお待ちしております。参加を希望される方は、4月23日(水)正午までに、「広島芸術学会例会懇親会参加希望」という件名で、事務局宛に電子メールにて参加をお申し込みください(E-mail: hirogei@hiroshima-u.ac.jp)。お問い合わせも事務局のアドレスへお願いいたします。(※座席数確保の都合で、当日の飛び込み参加は難しいと思います。事前申し込みをお願いいたします。)

 

時間:18:00〜

会場:サワディレモングラス・グリル(広島県広島市中区堀川町5-2 モーツァルトハウス4F)

https://sawadee-lemongrass-grill.owst.jp/

 

2.事務局から

◆新入会者のお知らせ(敬称略)

趙真真(ちょうしんしん/美学・芸術学(文人煎茶の美意識)日本思想史(文人煎茶の成立と思想変容))

松山聖央(まつやま・まお/環境美学、日常美学、雰囲気学、芸術学、環境心理学、建築環境学、アートマネジメント、ミュゼオロジー)

住所、メールアドレスの変更、入退会については、
下記事務局までご連絡ください。

広島芸術学会事務局
〒739-8521 東広島市鏡山1-7-1
広島大学 総合科学部 人間探究領域(人間文化)
Fax: 082-424-0752
E-mail: hirogei@hiroshima-u.ac.jp