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広島芸術学会会報 第104号
東アジアの現代音楽祭2009 in ヒロシマ~作曲家の現在~ 音楽監督 伴谷晃二 [日本現代音楽協会創立80周年記念プレイヴェント]
日本、韓国、中国、台湾、香港、フィリピン等の国々の現代作曲家との交流をとおし、世界における文化・芸術のとりわけ東アジアの潮流に触れることにより、互いに多文化社会の共生を理解し合い、また広島を中心とした中国・四国地方のみならず、日本の現代芸術の発展に貢献・寄与することを目的とします。企画・内容は下記のとおりです。2009年10月3日(土)「コンサート」(作曲作品展:第1部と第2部;入れ替え制)、および4日(日)「基調講演(招待作曲家;湯浅譲二先生)+国際シンポジウム」を行い、<ヒロシマからのメッセージ>として全国的および世界的な展開を図ります。今回のイヴェントを通して、音楽と他の芸術諸ジャンルとの共有領域を模索することができれば幸いです。
公演名:「東アジアの現代音楽祭2009in
ヒロシマ~作曲家の現在~」 日 時:2009年10月3日(土)と4日(日) 会 場:アステールプラザ・オーケストラ練習場 主 催:広島芸術学会・現代音楽プロジェクト(共同主催) 共 催:ひろしまオペラ・音楽推進協議会、(財)広島文化財団 協 力:日本現代音楽協会、中国・四国の作曲家、エリザベト音楽大学 協 賛:(株)ヤマハミュージック中四国、ブレーン(株)他 後 援:(社)日本作曲家協議会、東京音楽大学、広島文化学園大学他
<プログラム> 1.コンサート:2009年10月3日(土)(入場料:2000円/入れ替え制) 第1部14:00~16:00 第2部17:00~19:00 LEE,Gene
Woo(韓国)、LEE,Boknam(韓国)、PARK,Euh-Ha(韓国)、KIM,Joonghee(韓国)、LU,Wen-Tze Grace (台湾)、CHAN,Wing Wah (香港)、TOLEDO,Chino(フィリピン)、YAO,Henglu(中国)、GUO,Yuan(中国)、湯浅譲二(日本)、糀場富美子(日本)、伴谷晃二(日本)の室内楽作品(1人~3人の演奏者;2003~2008年の作品)を発表。演奏は広島交響楽団コンサートマスターおよび団員、エリザベト音楽大学、広島文化学園大学教員他 広島芸術学会および現代音楽プロジェクト会員 。
2.基調講演+国際シンポジウム:2009年10月4日(日)(入場料:1000円) 「東アジアの音楽とコスモロジー」 基調講演<今日、音楽創
にあたって考えるべきこと>:湯浅譲二 14:00~14:30 国際シンポジウム:伴谷晃二・能登原由美(日本;コーディネーター) 14:45~16:30 湯浅譲二(日本)、LEE,Gene Woo(韓国)、LU,Wen-Tze Grace(台湾)、CHAN,Wing Wah (香港)、GUO,Yuan(中国)
広島芸術学会第23回大会報告
研究発表① ウイリアム・ブレイク『ヨブ記』挿絵における再構築された主題 ~旧約聖書の人物が反道徳律的キリスト教徒として再生するまで 発表:広島大学大学院博士課程 エリック・パイル(PYLE,Eric
Allan) 報告:大山智徳
ロンドン生まれの画家であり、詩人でもあるウイリアム・ブレイク(1757~1827)の『ヨブ記』の挿絵21枚の中から最初と最後の銅版画を取り上げ、通常の理解である神への忍従と謙遜から法悦とヴィジョンへと至る彼固有の解釈を呈示するという発表であった。 報告後、フロアーからはブレイクの幻視体験前後における作品の変化、報告者が日本でブレイク研究を続ける実存的意味、図像学的な意味での朝陽と夕陽の解釈の差異、神と鑑賞者のまなざしにおける左右の意味についての質問等が飛び交った。 「会報」の性格を考えれば、参加者のみならず、参加できなかった「会報」でのみ情報を得られる会員に対して、できるだけ忠実に報告を臨場感溢れる文体で再現すべきかとも考えたが、この内容はすでに、「会報 第103号」で予告されており、いずれ『藝術研究』で論文発表されるであろうことを考え、あえてこの「掟」を破らせていただこうと思う。 それは、報告者パイル氏の困惑とでも言えるような違和感にこそ、彼がブレイクに強く魅了された秘密が隠されていると感じたからだ。 その困惑とは神秘体験の言語化・論文化によっては表せない、むしろ、そうすることで失われてしまう体験に属することだ。ブレイクは幼少期より幾多の幻視を体験している。この神秘体験は彼の啓示的とでも形容できる特異な美術表現や言葉となり、芸術作品として高い評価を受けることになる。この評価があるということとは別に、ある種の神秘体験をした者にしかわからない、あるいは通じない「法悦とヴィジョン体験」(神秘体験)を神秘体験のない多くの人たちにブレイクの作品を通じてパイル氏が最も伝えたい事象なのではないだろうか? 神秘体験を学問上の言説で語り、伝えることで読者に論理的な理解ではなく、体感を求めるという逆説的で原理上極めて困難な学問的営為に果敢に挑戦され続けるパイル氏に、私は後期ウィトゲンシュタインの言語ゲームを「学」として論じるウィトゲンシュタイン学者の困難と同型の苦悩を感じた。 神秘体験を言語化し、論文化するという学問的営為とその途上で幾度となく訪れる疎隔感、簡単に言えば「むなしさ」をパイル氏がご自身の実存とどう調停されていかれるのか、今後のパイル氏に注視するとともに、熱い想いで応援させていただきたい。 その成功が新しい文体の創
とともに誕生することを確信して、「会報」の機能を十分果たしているとは言えないこの奇妙な一文をパイル氏に捧げたい。
研究発表②の報告はまだ届いておりませんので、次号に掲載予定です。
研究発表③ カラーフィールド絵画と大衆文化 発表:広島市立大学 准教授 加治屋健司 報告:広島市立大学 大学院 小西寛之
20世紀を代表するアメリカの美術批評家クレメント・グリーンバーグは、ジャクソン・ポロック、ウィレム・デ・クーニングら抽象表現主義の画家を、モダニズムを担う存在として紹介している。彼は、平面性こそがモダニズムを近代以前の大家たちから分かつものであると強調し、抽象表現主義を装飾的な「壁紙」と区別しハイ・アート(純粋芸術)として論じている。本発表は、そのような彼の主張に反して、ファッションとライフスタイルの雑誌『ヴォーグ』の「芸術のある私生活」と題した小特集で、彼の文章と4枚のリヴィングルームの写真が掲載されているという意外な視点から始まる。 カラーフィールド絵画は、その軽やかさや平面性ゆえに、室内空間を乱すことなく秩序を維持することで、リヴィングルームにおいて互いに干渉することなく、自らを提示しているとグリーンバーグは主張している。またモダニズム絵画を支える社会構
についても論じており、モダニズム絵画とは「労働としての芸術」に他ならないという彼の主張を引いて、大衆文化との関係を浮かび上がらせている。 当時は物議を醸した、モダニズム絵画とモデルを組み合わせて撮影したファッション雑誌から、じわじわ頻繁に美術批評家らの特集が一般雑誌にも掲載されて、消費社会の波に押されて互いの垣根を越えていく。そうした中でグリーンバーグは、モダニズム絵画の色彩の構成に、一貫性の美を見出す。しかしやはり一方で、カラーフィールド絵画を含むモダニズムの絵画は、消費社会に巻き込まれて、変容を被らざるを得なかった。そういった別の視点からカラーフィールド絵画を読み直し、戦後アメリカの社会と芸術の新しい視点を語っている。それは、アートと大衆の入り乱れていることが当たり前になった現代においても、現代の美術を読み解くヒントになるではないかと考えさせられた。
シンポジウム
「東アジアにおける芸術文化と生活」 報告者:大石和久(北海学園大学)
広島芸術学会大会で恒例となっているシンポジウムが、今年度、第23回大会においても開催された。今年度のテーマは「東アジアにおける芸術文化と生活」。日常生活に密接に結びついている東アジアの芸術文化をめぐって議論が繰り広げられた。まず司会の関村誠氏から、このシンポジウムが今年の10月に開かれる広島芸術学会主催「東アジアの現代音楽祭2009
in ヒロシマ」との関連で設定されたことが述べられ、その後4人のパネリストの報告がなされた。 青木孝夫氏は、西洋近代の芸術観とは異なり、東アジアの芸術観においては芸術とは非日常的なものではなく、むしろ日常性と相互融合していると述べ、またこのような事態は、現代においては、そのアート化された日常生活を考えるならば、半ば自然なこととなっていることを指摘した。 伊藤奈保子氏は、密教法具がインドを出発点に、インドネシア、タイ、カンボジア、韓国、日本に至るまで海を通じて流伝して行く様を、法具の形態などを通じて実証的に、また海流の流れから海洋学的に示した。伊藤氏によれば、東アジアの宗教的な共通性はこうして海を経路として形成された側面をもつ。 菅沼亨氏は、浮世絵(錦絵)の誕生と展開には、中国民衆版画が大きな役割を果たしていると指摘する。錦絵の空刷りやきめ出しといった技法に、中国版画の影響が認められる。このような錦絵の例は、東アジアの文化の中心には中国があった、ということが再確認させてくれる。 鈴木榮子氏は、室内装飾としてのいけばなの歴史を紹介しながら、いけばなが植物を生かし、いのちをいきいきと見せ、その個性をあるがままに肯定しながら、全うさせる点がその特徴であると指摘する。日常の生活空間を飾るいけばなは、まさしく芸術と生活が相互に浸透しているケースであろう。 最後に、会場からも多くの質問がなされ、東アジアの芸術概念を炙り出すような活発な議論がなされたことを付け加えておきたい。 現在、グローバル化された世界の中で、政治的にも経済的にも新たな仕方で東アジアの輪郭が浮かび上がっており、このような状況を考慮するならば、東アジアの芸術観とは何かという問いはアクチュアルなものであると言えるだろう。報告者には、上に見たような多様な切り口からなされたそれぞれの報告の中に、このアクチュアルな問いに答えるための何らかのヒントが含まれているように思われた。
イベント情報
■音楽
●無伴奏ヴァイオリンライブ・高橋和歌 日時:10月14日(水)19時~ 会場:純音楽茶房「ムシカ」(広島市南区西蟹屋2-2-11) 料金:2500円(前売り2000円) 問い合わせ:音楽のパレット事務局 電話070-5528-0648 *演奏曲目:バッハ
無伴奏ソナタ第1番 ト短調BWV.1001ほか
●尾崎亜美 with フレンズ 加藤和彦 木下航志 in さくらぴあ 日時:10月25日(日) 17時30分~ 会場:はつかいち文化ホール さくらぴあ大ホール 料金:6000円 (前売り5500円)全席指定 問い合わせ:広島エフエム放送 電話082-251-2200
■美術
●広島市中心部に「ギャラリーCASA」がオープン!
●イタリアの印象派 マッキアイオーリ 光を追い求めた画家たち
●円空・木喰展 「庶民の信仰」の系譜 日時:~10月25日(日)
9時半~17時 会期中の休館日9月9日(水)、10月14日(水) 会場:奥田元宋・小由女美術館(三次市東酒屋町) 料金:一般1100(900)円、ペアチケット1800円、高・大学生500(400)円、 中学生以下無料 ※( )は前売り料金 問い合わせ:奥田元宋・小由女美術館 電話0824-65-0010
●筆の世界に遊ぶ文化人たち 2009 日時:~11月3日(日) 9時半~17時(入館は16時30分まで) 会場:筆の里工房(安芸郡熊野町) 料金:大人500円、小中高生250円 問い合わせ:筆の里工房 電話082-855-301
●山本美次個展 日時:12月1日(火)~7日(月) 会場:広島そごう本館美術画廊
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